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「癒し」と「治療」の違い

「癒し」とか何か?

今や巷には数々のリラクゼーションにあふれ、私たちは癒しという感情を簡単に味わえる環境…といっても過言ではありません。しかしながら、この癒しには注意が必要です。

 

まず癒しには「精神的な癒し」と「肉体的な癒し」とがありますが、前者は心の疲れをとることや、ストレスを軽減したり、なくしたりすることを指します。大自然に包まれたり、ペットを飼ったりすることによって癒されるのは、主に心であるといえるでしょう。後者は身体の疲れをとることや、交感神経優位な状態を副交感神経優位にすること、つまり、リラックス状態にすることを指します。温泉やマッサージなどによって癒されるには、主に身体です。

もちろん、身体と心は密接に関わりあっています。身体が疲れている時は心も疲れており、ストレスを軽減させることは、身体をリラックスさせることにもつながります。逆も然りです。身体が疲れから解放されてリラックスすれば、ストレスが減り、心も癒されます。この癒しと深く関わっている脳内物質は、セロトニンとオキシトシンです。いずれも、体内でさまざまな働きをしていますが、心身の安定にも大きく関与しており、「幸せホルモン」「癒しホルモン」とも言われています。

セロトニンは前頭前野を活性化し、海馬や偏桃体の過剰な働きを抑えたり、ドーパミンやノルアドレナリンなどの暴走を抑えたるする作用があります。そのためセロトニンが不足すると、思考能力や私欲が低下する、感情の起伏が激しくなる、交感神経が優位になるなどの状態があらわれやすくなります。

オキシトシンにはセロトニンを活性化させたり、副交感神経を刺激して脳の疲れを取り、ストレスへの耐性を強めたりする働きがあります。癒しの感情にはただの気分の問題ではなく脳内物質がかなり関与しているといえるのです。

そして、セロトニンとオキシトシンの分泌量は睡眠不足や運動不足、食事の偏り、そして慢性的なストレスを受け続けたりすることで減少します。つまり不規則な生活やストレスなどによってセロトニン・オキシトシンが不足すると、精神が不安定になったり、交感神経が優位になったりして、脳や体がゆっくり休むことができなくなります。そのために疲れやストレスが軽減されれば、セロトニンやオキシトシなどの減少が抑えられ、精神が安定し身体もリラックスした状態を取り戻します。そのようなとき人は「癒された」と感じるのです。

 

◎身体を癒すのに「癒し」は必要ない

身体を癒すことはもちろん大事です。現代人の身体は、環境の変化にうまく適応できておらず、常にストレスにさらされ、緊張状態にあります。交感神経優位になっている身体を、意図的に副交感神経優位にすることは、心身の健やかさを保つうえで重要です。ただ、現代人が「身体の疲れ」だと思っている状態の多くは、単なる体力不足です。あまり身体を動かさない割に、カロリーの高い食事をとっていたり、睡眠時間を削ったりしてるから、エネルギーが足りず、身体が疲れているように感じてしまうのです。もちろん、不規則な生活や食事の偏りは、セロトニンなどが不足する原因ともなります。そのような場合に必要なのは、温泉やマッサージではありません。適切な運動と、栄養価の高い食事、十分な睡眠です。

 

◎「ストレス社会」という幻想を認識する

「現代社会はストレス社会である」とよく言われますが、今日本人が抱えている心の疲れやストレスは、実はそれほど深刻ではありません。厳格な身分制度にがんじがらめに縛られていた江戸時代や、絶えず空襲におびえていた戦時中に比べれば、ストレスははるかに少ないのではないでしょうか。つまり癒し(癒される)ということは、平和で文明的な社会だからこそ生まれる、贅沢な感情であるといえます。命の危険にさらされながら過ごしていたら、とても自然やペットに触れたぐらいで「癒された」と感じることはないでしょう。癒しのブームというのは、あくまでも消費を促すキャンペーンにすぎません。

 

「治療」とは何か?

私たちが治療をするうえで、よく「ゆがみ」という言葉を使います。しかしどうも世間でも「ゆがみ」という言葉が流行りのようで、「ゆがみは悪いもの・直さなければいけないもの」という考えがひとり歩きしてるように思います。しかし、本来生きている以上「ゆがみ」のない体というのはあり得ません。それは「ゆがむ」ということ自体が正常な働きだからです。以前、来院していた小さく見えた老人が亡くなった途端に腰が真っ直ぐに伸びて棺桶に収まりきれなかったという話があるように、生きている体はゆがむ必要があってこそゆがんでいるのです。これをやみくもに治そうとすればかえって体を壊してしまうのです。

 

私の経営する治療院でも「病院で側弯症と言われました」とか「首の骨の何番目がゆがんでいると診断されました」とかという人がたくさん来られますが、私たちのやることは何か異常があれば、その根本原因を読みとることであり、「ゆがみ」そのものを問題にすることはまったくないです。

というのも、

生きているうちは体のどこかに異常があればそれを補う働きが生まれ、またどこかが壊れそうになっていれば、それを治そうという力が体の中からわき起こるものです。そしてその働きが「ゆがみ」といわれるような形で現れるのは体にとっては普通のことなのです。

もちろん極端なゆがみによって体の機能が影響を受けてしまっている場合もあります。このパターンに関しては「ゆがみ」が「ゆがみ」を作り出してる結果であり、体のあらゆる連係プレーによって、悪い「ゆがみ」を引き起こした状態ともいえます。この場合はなるべく早くその根本原因を見つけ出し、治したほうがいいでしょう。

 

しかし、ある程度のゆがみはむしろ体のためにプラスに働いている場合がほとんどです。

 

今の日本の医療は「処置をする」ことに重点を置きすぎています。まずは施術の受けすぎ、薬の飲みすぎです。施術のような、薬のような、外からではなくまずは自分の内側の方が大切なのです。

 

では次回は

自分の内側という点について解説したいと思います。

 

ではまた。